アトピーの原因



厚生労働省の調査によると、平成17年のアトピー性皮膚炎患者の数は38.4万人と、平成14年の27.9万人から比べると1.4倍近くも増加しています。

アトピーの原因は、以前は遺伝によるものだという認識が一般的で、実際今でも医師がアトピーと診断する際には、家族歴、既往歴、つまり、親がアトピー素因を持っていたかを基準にしています。

ところが、近年、親がアトピーではないにもかかわらず、突然アトピーを発症する方が増加しています。つまり、遺伝以外の原因でアトピーを発症する方が増えているということになります。

では、遺伝以外の原因とはどのようなものがあるのでしょうか。

現在わかっている原因には以下のようなものがあります。

1.花粉の増加
2.屋内のダニの増加
3.化学物質
4.ストレス
5.腸内細菌バランスの乱れ
6.現代型の生活環境

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

【1.花粉の増加】

戦後20年の造林事業で、スギの木を大量に植林したことにより、全国の山林面積の5分の1をスギが占めるまでになってしまいました。

スギ花粉は植林してから20年ほどしてから飛散を始めるため、同時に植えられたスギから大量に花粉が飛散するようになりました。

さらに、それよりも遅れて植林されたヒノキの花粉も最近では増えてきています。

これらスギやヒノキの花粉飛散量の増加によって、アレルギーを発症し、アトピー性皮膚炎を併発するケースが増えています。

 

【2.屋内のダニの増加】

戦後の住宅ブームで、鉄筋の団地やマンションが数多く建てられました。また、アルミサッシの普及によって暖かく密閉性の高い住宅が増加しました。

ダニは、温度が一定で湿度が高い場所を好むため、これらの住宅の増加により、屋内のダニの数も増加しました。

さらに、畳の上にカーペットを敷いて生活する生活習慣がこれに拍車をかけました。

ある調査によると、室内のダニの数は、ここ30年で5倍以上に増えているとのことです。

ダニとの接触が増えることによって、今までアレルギーではなかった方が感作を起こし、アトピーを発症することも考えられます。

 

【3.化学物質】

化学物質が肌や粘膜に接触すると過分反応がおきますが、これは、Th1優位の反応です。

しかし、長期間化学物質に接触することによって樹状細胞というTh1をコントロールする細胞の働きが弱り、Th2優位になります。

Th2優位になることで、IgEが体内で作られる量が増え、アレルギー体質になります。

近代型の生活により、ホルムアルデヒド、食品添加物、化学合成品を含む化粧品など、化学物質に接触する頻度が増えたことによって、アレルギー患者が増えたとの報告もあります。

 

【4.ストレス】

現代人で仕事や人間関係のストレスを感じていない方は非常に少ないと思いますが、いかがでしょうか。

ストレスは一見アトピーとは関係なさそうですが、実はそうではないようです。

ストレスがたまると交感神経が緊張状態になり、「アドレナリン」という物質が多く作られます。アドレナリンは、Th1の働きを制御するため、結果としてTh2優位な状態になり、アレルギー体質になりアトピーを引き起こす可能性があります。

 

【5.腸内細菌バランスの乱れ】


腸内細菌のうち善玉菌と呼ばれるビフィズス菌(乳酸菌の一種)は、Th1の働きを優位にする働きがあります。

しかし、欧米型の食事により、肉などのたんぱく質を必要以上に摂取することにより、悪玉菌が増え、ビフィズス菌の数を減らしてしまいます。

また、母乳で育たなかった子供は、腸内のビフィズス菌が少なく、大人になってもその腸内バランスは変わりません。

その結果Th2優位になり、アトピーを引き起こす可能性が高くなります。

 

【6.現代型の生活環境】

人間には生まれつき、自然免疫という細菌と戦う免疫機能を持っています。この自然免疫子供のころに細菌やウィルスに感染することで発達してきます。

しかし、現在人は乳幼児のころから衛生状態の良いところで育ち、薬で感染を防いでしまいます。

自然免疫が発達しないと、Th1を優位にするナチュラルキラー細胞の働きが弱まり、結果としてTh2優位な状態になってしまいます。

 

以上のようなさまざまな原因により現代人は、遺伝によらずとも、大人になってからでもアトピーを発症する可能性があるのです。


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